Salmo marmoratus(アドリア海流域のマス):カジカを狩る、アドリア海の川の捕食者

斑点のないマス。赤や黒の斑点の代わりに大理石模様をまとい、英語版Wikipediaによれば、その模様は環境によって濃くも薄くもなります。しかも大きくなり、FishBaseによれば最大120 cmに達します。この記事で扱うのは *Salmo marmoratus* です。日本語には確立した和名がありません。「アドリア海流域のマス」は説明のための言い換えで、正式な名前ではありません。各国語では、英語 marble trout、イタリア語 trota marmorata、スロベニア語 soška postrv(「ソチャ川のマス」)、ドイツ語 Marmorierte Forelle / Marmorataforelle、フランス語 truite marbrée、スペイン語 trucha marmorata(trucha de mármol とも)、ロシア語 мраморная форель、ノルウェー語 marmorørret、デンマーク語 marmorørred、フィンランド語 marmoritaimen(GBIF経由のCatalogue of Life)と呼ばれ、ボスニア語とセルビア語では glavatica(Wikidata)です。オランダ語、スウェーデン語、ポルトガル語、トルコ語、ギリシャ語、クロアチア語、アルバニア語、日本語、アラビア語については、WikidataとGBIFで確認できる固有の種名は見つかりませんでした。アドリア海に注ぐ冷たい山岳河川の捕食魚であり、ヨーロッパで最も希少なサケ科魚類のひとつです。ここでは、見分け方、生息地、食べもの、産卵の時期、そしてなぜ最大の敵が別のマスなのかを解説します。

魚を襲う捕食者へと育つマス

記載したのはジョルジュ・キュヴィエで、1829年のことです(FishBase、GBIF)。ブラウントラウトやタイセイヨウサケと同じく、サケ科の *Salmo* 属に属します。FishBaseによれば、若い個体はさまざまな水生・陸生昆虫やその他の無脊椎動物を食べ、成魚になると魚食に切り替わります。ドイツ語版Wikipediaはさらに具体的で、稚魚は主に流下するカワゲラ、トビケラ、カゲロウの幼虫を食べ、夏には水面の昆虫も食べます。成魚は魚を狩り、主な獲物はしばしばカジカの仲間(*Cottus gobio*)で、共食いもよく見られます。スロベニア語版Wikipediaは、成魚は薄暮時に狩りをすると補足しています。FishBaseは栄養段階を4.0とし、生息する川の食物連鎖の頂点に位置づけています。

見分け方

ドイツ語版Wikipediaによれば、体は魚雷形で側扁し、力強いひれと小さなうろこを持ちます。地色は水域によって灰色や緑から茶色まで幅があります。大理石模様がはっきり見えるようになるのは、ドイツ語版Wikipediaによれば2歳前後からです。頭部も目を引きます。英語版Wikipediaによれば、ボスニア語の名前 glavatica は体長の22〜25 %を占める大きな頭に由来しています。

  • 大きさ: 一般的には英語版Wikipediaで30〜70 cm、スロベニア語版Wikipediaで50〜70 cm。記録個体は1メートルを超えます(下の「矛盾」を参照)。
  • 寿命: FishBaseでは少なくとも10年、ドイツ語版Wikipediaでは10年以上。
  • 見間違い その1: 斑点模様のブラウントラウト(*Salmo trutta*)。ドイツ語版Wikipediaによれば、*Salmo marmoratus* にはブラウントラウトや交雑個体に見られる赤い斑点がありません。
  • 見間違い その2: 両種の交雑個体。イタリア語版Wikipediaによれば交雑個体には繁殖能力があり、純粋な *Salmo marmoratus* との戻し交配から、交雑の痕跡がほとんど見た目にわからない子孫が生まれることがあります。つまり水辺で確実に言えるのはこれだけです。ドイツ語版Wikipediaによれば、赤い斑点が多い魚は純粋な *Salmo marmoratus* ではありません。

生息地:ソチャ川から南チロルまで

FishBaseは分布をアドリア海流域、すなわちポー川の北側の支流からソチャ川(イタリア語でイゾンツォ川)とリジャナ川の水系まで、イタリアとスロベニアとしています。英語版Wikipediaは、イタリアではポー川上流の左岸支流のほか、アディジェ川、ブレンタ川、ピアーヴェ川、タリアメント川、リヴェンツァ川、さらにソチャ川とナティゾーネ川を挙げています。ドイツ語版Wikipediaは例として南チロルのパッシリオ川とアディジェ川を挙げています。イタリア語版Wikipediaによれば、ティチーノでは20世紀半ばまで広く分布していましたが、現在はほぼ姿を消し、メレッツァ川にわずかな個体群が残るのみです。スイスでは、ドイツ語版Wikipediaによれば2024年の「今年の魚」に選ばれました。

必要なのは冷たく酸素の豊富な水です。FishBaseは、山地や山麓の渓流・河川、アルプスの川の上流域、砂や礫の底の氷河湖を挙げ、夏の水温はたいてい15 °Cまでとしています。スロベニア語版Wikipediaによれば、小型の個体は中程度の水深にいますが、大型の個体は深い淵に単独で潜んでいます。

速い流れの礫で産卵する

FishBaseによれば、流れの速い(毎秒0.4〜0.5 m)川や渓流の礫底、水深0.6〜0.8 mで産卵します。そのための回遊はしないか、ごく短距離です。湖の個体は産卵のために流入河川へ遡上します。FishBaseによれば、オスはメスより約1週間早く産卵場に到着します。卵は約45日でふ化し、10 °Cでは仔魚は産卵から59〜63日後に摂餌を始めます。ドイツ語版Wikipediaによれば、メスは体重1キログラムあたり約1,500〜2,000粒の卵を産みます。メスは約4歳で性成熟し、オスはそれより約1年早く成熟します。かつては、ドイツ語版Wikipediaによれば大型個体が数か月にわたり汽水域へ下っていましたが、今では堰がその道をふさいでいます。英語版Wikipediaは海での捕獲例を挙げています。アドリア海東岸のイグラネ沖で、95.5 cm、10.22 kgでした。

なぜ最大の敵は別のマスなのか

FishBaseは最大の脅威として、放流されたマス(*Salmo trutta* と *Salmo cenerinus*)との交雑を挙げ、さらに汚染、乱獲、河川改修を挙げています。ドイツ語版Wikipediaによれば、多くの水域ではもはや交雑個体しかいません。加えて、減水区間を生む水力発電、堰、そして魚を死なせ産卵場を泥で埋める排砂(フラッシング)、さらにニジマスやカワマスの放流も問題です。英語版Wikipediaによれば、スロベニアでは遺伝的に純粋な個体群が8つすべて ソチャ川流域の人里離れた渓流に残っており、トルミンの釣りクラブがそこから再導入プログラムを始めました。スロベニア語版Wikipediaは、釣り人たちが約10年前から純粋な個体を育て、ブラウントラウトを取り除いている様子を伝えています。EUでは、ドイツ語版Wikipediaによれば生息地指令(FFH指令)附属書IIに掲載されています。

水辺のあなたにとっての意味はこうです。出かける前にその釣り場のルールを確認しましょう。禁漁期、最小サイズ、使える餌やルアー、そもそも *Salmo marmoratus* を持ち帰ってよいのか。ガイド付きのツアーならガイドに聞いてください。魚を別の水域に移さないこと。交雑個体はまさにそうして生まれます。冬は産卵床の礫の上を立ち込んで歩かないこと。そしてサケ科魚類なので、やり取りは短く、手を濡らして、魚は水に浸けたままに。水温が高く酸素の少ないときは、狙わないほうが賢明です。

情報源に見られる5つの矛盾

  • どこまで大きくなる? FishBase:標準体長120 cm、公表された最大体重50 kg。英語版Wikipedia:生きたまま捕獲された最大個体は120 cm、22.5 kg。スロベニアでの最大は死んで見つかったメスで117 cm、24 kg。30 kgまでの報告もあり。スロベニア語版Wikipedia:スロベニアでの最大捕獲は121 cm、25 kg。イタリア語版Wikipedia:1925年にルガーノ湖で32 kgの記録。
  • どれほど絶滅が危惧されている? FishBaseと英語版・スロベニア語版Wikipedia:危急種(Vulnerable、IUCN 2024)。ところが同じFishBaseページの生物学の解説では低懸念(Least Concern)とされ、スウェーデン語版とフランス語版WikipediaもLeast Concernとしています。ドイツ語版Wikipediaは分布域全体では低懸念、北イタリアについては絶滅寸前としています。
  • 産卵はいつ? 英語版Wikipedia:11月と12月。ドイツ語版Wikipedia:10月下旬から12月。スロベニア語版Wikipedia:11月から1月。
  • 分布はどこまで? FishBase:イタリアとスロベニアのみ。ネレトヴァ川、スカダル湖(シュコドラ湖)、ドリン川の個体群は、FishBaseによればまだ特定されていない別種に属する可能性があります。一方、英語版Wikipediaはネレトヴァ川を分布に含め、最大級の個体のふるさとだとしています。
  • 赤い斑点はある? ない? ドイツ語版Wikipedia:*Salmo marmoratus* には赤い斑点がない。英語版Wikipedia:一部の個体には側線に沿って赤い斑点がある。

名前にまつわる3つの落とし穴

  • 大理石模様だから Salmo marmoratus とは限らない。 英語版Wikipediaによれば、ノルウェーのオトラ川の一部のブラウントラウトも大理石模様をまといます。これは種内の色彩変異で、*Salmo marmoratus* ではありません。
  • 「glavatica」。 ボスニア語とセルビア語での呼び名で(Wikidata)、英語版Wikipediaによれば最大級の個体はボスニア・ヘルツェゴビナのネレトヴァ川から来ています。まさにFishBaseが、そこのマスは別種かもしれないとしている地域です。「glavatica」という言葉を見たら、その魚がどの川のものかを確かめましょう。
  • 「ソチャ川のマス」は、ソチャ川のマスすべてではない。 スロベニア語版Wikipediaによれば、ソチャ川には放流されたブラウントラウトやその交雑個体もすんでいます。soška postrv という名前が指すのは *Salmo marmoratus* だけです。

残るのは、このシリーズのどの記事も出発点にしている問い、「いつ」です。生息環境、獲物、習性は上に書いたとおりで、変わることはありません。毎日変わるのはそれ以外のすべて――光、気圧、風、水温、水位――であり、川で過ごす一日が報われるかどうかは、まさにそこで決まります。それを計算するのが StrikeAhead です。あなたの釣り場の条件を取り込み、いつ出かける価値があるかを教えてくれます。そして、知らない釣り場、そのポイントやルールは初日からはわからないので、StrikeAhead Pathfinder が誰と出かけるかを教えてくれます。厳選されたガイドとスキッパーで、掲載前に直接審査(ライセンスと保険)済み。宣伝写真ではなく検証済みの釣果を示し、有料ランキングはなく、釣り人のあなたには仲介手数料がかかりません。アプリは「いつ」を、Pathfinder は「誰と」を教えてくれます。